Wildlife Museum

日本の野生動物

日本列島は、北の北海道から南の沖縄にかけて細長いため、気候帯が亜寒帯から亜熱帯まであります。日本の国土の三分の二は森林が占め、中部地域には3000mクラスの高い山が連なり、海に囲まれているなど、国土が狭いわりに多様な環境に恵まれています。また、氷河期におけるにアジア大陸との接続と分離によって、動物が特有の進化を遂げたと考えられています。このような多様な環境と列島の成立過程が、日本の豊かな動物相を育んだと考えられています。日本の哺乳類と鳥類についてわかりやすく解説し、観察できる地域をご紹介します。


日本の哺乳類

日本は哺乳類の種数と固有種が多く、現在、土着の哺乳類(イルカ・クジラ類、ジュゴンなどを除く)は110種とされ、そのうち44種が固有種です。
日本は、ユーラシア北部を占める旧北区と東南アジア地域起源の東洋区の動物地理区に含まれています。この動物地理区はトカラ列島と奄美群島の間にある渡瀬線で分けられ、この渡瀬線以北の本土域が旧北区に含まれ、温帯から寒帯に起源をもつ種がみられます。東洋区は渡瀬線以南になり、亜熱帯から熱帯に起源をもつ種がみられます。この線で分けられる代表的な種は、北はニホンザル、ムササビ、カモシカなど、南はトゲネズミ、ケナガネズミなどがいます。
もうひとつの分布の境界は、北海道と本州の間の津軽海峡です。この海峡はブラキストン線といわれ、最終氷期にも本州と北海道はつながらなかったと考えられています。本州側には、ニホンザル・ツキノワグマ・カモシカ・ムササビ、カワネズミなど、北海道側にはヒグマ・クロテン・ナキウサギ・シマリスなどがいます。


北海道の哺乳類

ヒグマ、ナキウサギ、シマリス、エゾリス、クロテン、ユキウサギ、タイリクモモンガなど、国内では北海道にしか生息しない種が多くいます。小型哺乳類では、ムクゲネズミ、ミカドネズミ、エゾヤチネズミなどのネズミ類、トウキョウトガリネズミ、オオアシトガリネズミ、ヒメトガリネズミなどの食虫類が、北海道だけに生息しています。
ヒグマは海岸から高山まで広く生息し、時には住宅地付近に現れることもあります。ナキウサギは、大雪から日高にかけての露岩帯に生息していますが、分布は局地的です。タイリクモモンガは平地の防風林から山地の森林まで、シマリスは海岸の林から高山のハイマツ帯まで生息しています。エゾリスも分布が広く、山地や平地の森林の他、都市公園や住宅地付近の緑地でも見られます。キツネも身近に生息し、観光地では、相変わらず人に餌をねだるものがいます。ニホンジカは近年増加し、採食による自然植生への影響や農作物被害が深刻になり、交通事故も増えています。
沿岸にはアザラシ、トド、ラッコなどの海棲哺乳類が生息しています。ゴマフアザラシは、冬季に北方からやって来ますが、道東の野付湾では周年見られます。ゼニガタアザラシは襟裳岬から根室半島にかけて周年生息しています。ラッコは根室半島から知床半島の沿岸に生息し、近年目撃例が増えています。


本州の哺乳類

平地のほとんどは人の生活域になっているため、多くの哺乳類は山地や丘陵の森林に生息しています。高い山地には、オコジョ、ヤチネズミ、トガリネズミ類など、低地から山地の森林にはムササビ、タヌキ、キツネ、アナグマ、ヤマネ、テンなどが生息しています。山地の渓流には水中生活に適応したカワネズミが生息しています。タヌキは都心にも見られ、ムササビは大木の多い社寺林やスギの植林地にも生息しています。ニホンモモンガはムササビに比べると生息域は狭く、やや奥地の方にすんでいます。ニホンリスは森林に広く分布していますが、中国地方では見られなくなっているようです。ネズミ類は、ヒメネズミとアカネズミが森林や草地などに広く分布し、ハタネズミとカヤネズミは草原や耕作地などに生息しています。モグラ類は、ヒミズが低地から山地の広い範囲に生息し、標高の高いところや岩礫地にはヒメヒミズが生息しています。コウベモグラとアズマモグラは西と東に分かれて分布しています。小型で高い山地に生息するミズラモグラは本州だけに生息しています。コウベモグラを除いたモグラ類は、すべて日本固有種です。
  コウモリ類は種数が多く、大群で洞穴をネグラにする種にはキクガシラコウモリ類、ユビナガコウモリ、モモジロコウモリなど、樹洞や幹の隙間に潜む種にはホオヒゲコウモリ類、ヤマコウモリなどがいます。ウサギコウモリ、カグヤコウモリ、ノレンコウモリ、テングコウモリ類などのように、樹洞、洞穴、家屋の中など、いろいろなところをネグラにする種も多くいます。ヒナコウモリは、東北地方の数カ所に集団繁殖地があり、関東以南で越冬個体が見つかっています。オヒキコウモリは海岸の岩場やコンクリート建造物の隙間をネグラにする集団が、最近見つかっています。アブラコウモリ(イエコウモリ)は民家の周辺に普通に生息し、建物の隙間をネグラにしています。小笠原諸島には固有種オガサワラオオコウモリが生息しています。
カモシカは、主に中部から東北地方の山地の急傾斜地に生息しています。中国地方では姿を消したと考えられています。北部のもの体色が白っぽく、南部のものは黒っぽい傾向があります。大型哺乳類による被害問題が各地で発生しています。ニホンジカは、日光、尾瀬、丹沢、南アルプスなど各地で増加し、自然植生に多大な影響を与えています。ニホンザルやイノシシによる農作物被害も多く、絶滅が心配されていたツキノワグマでさえ人家付近での目撃例が多くなっています。


四国・九州の哺乳類

四国と九州には高山帯がないため、オコジョやヤチネズミは欠くものの、タヌキ、キツネ、アナグマ、テン、ニホンジカ、イノシシ、ニホンモモンガ、ヤマネが生息するなど、ほぼ本州と同じような哺乳類相です。しかし、絶滅や希少になっている種が多く、九州では、ツキノワグマ、カモシカ、ニホンリスなどが絶滅または絶滅寸前と考えられています。ニホンモモンガも少なく、分布域は奥山の方に限られているようです。カワウソは1983年に高知県で確認されたのが国内最後の記録となっています。
対馬には、日本ではここでしか生息していないクロアカコウモリ、コジネズミ、チョウセンイタチ(本土には人為移入されている)が生息しています。ベンガルヤマネコ(固有亜種ツシマヤマネコ)も少数が生息しています。これらはいずれも朝鮮半島との共通種です。本土との共通種であるテン(ツシマテン)とニホンジカ(ツシマジカ)は固有亜種です。


南西諸島の哺乳類

孤立した島嶼群のため固有種が多く生息します。アマミノクロウサギは奄美大島と徳之島だけに生息しています。個体数は少なくありませんが、外来種のマングースによる捕食や交通事故によって、生息が脅かされています。トゲネズミとケナガネズミは、奄美大島、徳之島、沖縄島だけに生息しています。コウモリ類では、洞穴をネグラにするヤエヤマコキクガシラコウモリ(西表島、石垣島)、オキナワコキクガシラコウモリ(沖縄本島、宮古島)、樹洞をネグラにするヤンバルホオヒゲコウモリとリュウキュウテングコウモリ(沖縄島、奄美大島、徳之島)が生息しています。八重山諸島にはカグラコウモリ(タイ南部、ベトナムに生息する個体も本種とする考えもある)、奄美大島から南の西表島にかけてはリュウキュウユビナガコウモリ(コユビナガコウモリ)も生息しています。
西表島に生息するベンガルヤマネコ(固有亜種イリオモテヤマネコ)の生息数は100頭前後と考えられ、低地部の川沿いや湿地を好んで生息しています。小型のイノシシである亜種リュウキュウイノシシは、奄美大島、徳之島、沖縄島、西表島、石垣島に生息しています。オオコウモリの仲間のクビワオオコウモリは4亜種(エラブオオコウモリ=口永良部島とトカラ列島、オリイオオコウモリ=沖縄島、ダイトウオオコウモリ=大東列島、ヤエヤマオオコウモリ=八重山諸島)が生息しています。

参考文献
阿部永ら著 財団法人自然環境研究センター編 『日本の哺乳類【改訂版】』東海大学出版会2005年

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